TV番組のオン・デマンド配信に適したビジネスモデルを提案
モトローラは、近い将来各家庭に不可欠なサービスとなるテレビジョン・オン・デマンドソリューションを提供します。ユーザーのパーソナルメディア体験を加速させるため、メディアモビリティのビジョンの実現に注力し、性能と費用効率の高いソリューションや製品のみならず、先進的なサービスの基礎となるビジネスモデルを提唱します。
モトローラは映像配信ビジネス向けに、B-1、およびB-3という2つのビデオサーバー製品を提供しています(写真)。B-1はサーバー1台あたり最大3万ストリームを同時配信できるキャリア向けのビデオサーバーです(注1)。ストリーミング・データをDRAMに蓄積してから配信することで、映像データへのアクセス時間を短縮し、メンテナンス性を向上させています。一方のB-3は、B-1へのトラフィック集中を回避するために中小拠点に分散配置させたり、小規模展開をする際のメインサーバーとして使用する下位機種です。
B-1/B-3ビデオサーバーは、ビデオ・オン・デマンドやタイムシフトといった映像配信の基本機能に加えて、広告コンテンツをリアルタイムに挿入する「オン・デマンド広告挿入」を備えています。この機能はテレビ番組のオン・デマンド配信におけるビジネスモデルで重要な役割を果たすものです。
2008年12月にNHKが「NHKオンデマンド」を開始するなど、テレビ番組のオン・デマンド配信に向けた動きが加速しています。海外でも、英BBCの「BBC iPlayer」や米国の「Hulu」のように、テレビ番組の本格的なオン・デマンド配信サービスが登場しています。
ビデオ・オン・デマンドで配信されるコンテンツは国内では従来、ハリウッド映画、アニメ作品、ミュージックビデオなどが中心でした。NHKオンデマンドによって、そこに50年の歴史を持ち、国民が慣れ親しんだ地上波テレビ放送の番組が加わることになりました。これにより、国内のオン・デマンドビジネスのさらなる拡大が期待されます。
ホーム・ネットワークス・モビリティIPTV事業開発 シニアマネージャーの石原篤は、「テレビ局はオン・デマンドの番組配信に今後さらに力を入れていくでしょう」と予想しています。高機能なビデオレコーダーが普及したことで、テレビ局の決めた放送スケジュールに視聴者が従うのではなく、「都合の良い時間に見たい番組を見る」ことが当たり前になりつつあります。Blue-rayディスクや録画用HDDの大容量化で、その傾向にはさらに拍車がかかると見られています。
テレビ局もそうした視聴スタイルの変化を前提に、番組の配信を考えていく必要が生じていくでしょう。特に、広告収入に依存する民放テレビ局は、録画番組の視聴時にCMが飛ばされて広告効果が下がるよりも、オン・デマンド配信のビジネスモデルで、いち早く時代を捉えていくことを検討していく必要があるでしょう。
現在提供されているテレビ番組のオン・デマンド配信は、番組ごとに料金を支払うペイパービュー、または定額の月額料金で運営されています。しかし、テレビ視聴者の大多数を占める「何となく面白そうなので、チャンネルを合わせた」という人たちにとって、有料のサービスは気軽に利用できるものではありません。このためオン・デマンド配信にも、有料放送とは別に、広告収入を前提とする無料放送のビジネスモデルを用意する必要があります。
ただし、オン・デマンド配信の視聴者数は、地上波テレビに比べると今のところかなり少なくなります。このため、マスを対象とする地上波の広告モデルを単純に持ち込んでも、ビジネスとして成立しにくいでしょう。そこで、石原シニアマネージャーが提唱しているのが、オン・デマンド配信における行動ターゲティング広告の採用です。
行動ターゲティング広告とは、Webマーケティングの世界で広く知られている考え方です。具体的には、Webサイトの閲覧履歴、検索キーワードなどにもとづいて消費者の嗜好(しこう)を判断し、最適な広告を配信しようというものです。
オン・デマンドの番組配信でも、Webと同じように視聴者の閲覧履歴に応じて、広告を配信することができます。たとえば、スポーツ番組を中心に視聴するユーザーのSTB(セットトップボックス)にはスポーツ用品の広告を配信します。あるいは幼児番組を中心に視聴するユーザーのSTBには、玩具や子供服などの広告をそれぞれ配信します。ログイン手続きの際に、視聴者が見たい、または見てもよいカテゴリの広告を視聴者自身が登録することにより、最適な広告コンテンツを配信するやり方もあります。
モトローラのB-1/B-3ビデオサーバーが提供するオン・デマンド広告挿入は、こうした行動ターゲティング広告をリアルタイムに配信することを可能とします(図)。番組内容などに応じて適切な広告をリアルタイムに選択し、コンテンツ本体の前後、あるいはコンテンツの途中に挿入します。視聴者に「広告無しで有料」と「広告付きで無料」のいずれかを選択させる機能にも連動が可能となります。
地上波テレビ番組のオン・デマンド配信には、このほか著作権の問題がありますが、これはビジネスモデルに付随する二次的な問題と言えるでしょう。なぜなら、著作権の権利処理のコストに見合うだけの収益が得られる見込みがあれば、テレビ局などの利害関係者が解決に動くはずだからです(注2)。新規に制作する番組であれば、出演者を含む権利者との間で、オン・デマンド配信を認める契約をあらかじめ結んでおけば、問題は生じません。
オン・デマンドの番組配信はこれまで、「優良なコンテンツがないので視聴者が集まらない」、「視聴者が集まらないので十分な収益が得られない」、「収益が少ないので、優良なコンテンツを集められない」というトリレンマ(三すくみ)に陥って、本格的なビジネスとして始動することを懸念する声も聞かれました。モトローラのB-1/B-3ビデオサーバーは、この懸念を解決し、テレビジョン・オン・デマンドという次世代のパーソナルメディア体験の提供を可能にする有効な手立てとなるものです。
| 注1: | I/Oモジュールを10ポート搭載した上位モデルで、ビットレート2MbpsのSDビデオを配信する場合 |
| 注2: | 古い番組では、権利者の連絡先が分からず許諾を得られないケースがあり得ます。この問題を解決するため、著作権の権利者団体を中心に、音楽、映画、文学作品など各種著作物の権利者情報を登録する「権利者データベース」の整備が進められています。 |