IPネット経由の映像配信で、デバイスの垣根を超える
モトローラは米AT&TやKDDIなどの世界中の大手通信事業者に、IPネットワーク経由の映像配信で利用するIP-STBを提供しています。IPを使った映像配信はメディアモビリティの実現やコスト削減で大きな役割を果たすと期待されています。モトローラでは、多様な映像配信サービスをサポートする製品群を、今後も積極的に展開していくことを計画しています。
モトローラが提唱するメディアモビリティは、消費者が時間や場所の制約を受けずに映像をはじめとする魅力的なコンテンツを楽しめることを目指しています。そこではIPネットワークが重要な役割を果たすことになります。
映像コンテンツの配信にIPネットワークを利用するメリットとして、ホーム・ネットワークス・モビリティ取締役ホームビジネス担当の鈴木寛は「消費者がネットワークの違いを意識せずにコンテンツを利用できることです」と説明します。消費者は現在、インターネットのWebコンテンツを携帯電話、パソコン、PDAといった様々なデバイスで参照しています。同じようにIPという汎用的なプロトコルを使うことで、消費者はテレビ、パソコン、PDAなど様々なデバイスで映像コンテンツを楽しめるようになります。事業者にとっても、既存のIPネットワークやネット機器を利用することで、コスト削減の効果が期待できます。
IPを使った映像配信は一般にIPTVと呼ばれており、動画共有サイトYouTubeのようにインターネット経由で配信するタイプと、通信事業者が提供する閉域IP網で配信するタイプがあります。閉域IP網経由のIPTVの多くは、画像品質を保つために帯域制御の機能とともに提供されています。
モトローラは現在、米AT&Tや米ベライゾン・コミュニケーションズといった大手通信事業者に映像コンテンツの配信システムを提供しています。このうちAT&Tの映像配信サービスU-verse TVは私設IP網を使ったIPTVであり、IP-STB(IPセットトップボックス)の大半にモトローラ製品を採用しています。IP-STBとはIPTVのユーザー側に設置して、H.264などで圧縮された映像データをテレビで表示するために変換したり、EPG(電子番組ガイド)、VOD(ビデオオンデマンド)のリクエスト処理、DRM(デジタル権利処理)などの機能を提供する機器です。
米国における映像配信サービスは、もともとケーブルテレビ事業者が中心となって発展してきました。しかし、FCC(米連邦通信委員会)が2004年6月に地域電話会社が持つ住宅向け光ファイバの開放義務を撤廃したことで、2006年から2007年にかけて通信事業者が映像配信サービスに相次いで参入した経緯があります。ケーブルテレビ事業者のトリプルプレイ(同一回線による映像、電話、インターネットへのブロードバンドアクセスの提供)によって電話やブロードバンドアクセスの顧客を奪われた通信事業者が、対抗手段としてケーブルテレビの“本丸”である映像配信に乗り出したのです。
AT&Tやベライゾンがモトローラ製品を採用した理由について、鈴木は「高品質の製品を継続的に提供してきた実績をご評価いただいたことが大きい」と見ています。モトローラは配信事業者から消費者に至るエンドツーエンドのコンテンツ配信ネットワークを提供しています(図)。通信メディアを例に取ると、IPネットワークはもちろん、ケーブルテレビのQAM方式、さらに携帯電話までカバーしています。これら多彩な製品群から必要な機能を組み合わせることで、事業者は様々なプラットフォームや目的に応じて、コンテンツ配信ネットワークを構築することが可能になるのです。
すでに500万台超の出荷実績をもつ(*)世界のマーケットリーダーであるモトローラのIP-STBはVIP1200シリーズやVIP1900シリーズなど様々な製品群があり、地上波やケーブルテレビへの対応、録画機能の有無などの違いがあります。(*2009年Q1)
このほかKDDIが2008年11月にレンタルを開始したau BOX(VIP1830)のように、特定の事業者向けに機能を追加したIP-STBがあります。au BOXはKDDIのIPTVであるひかりone TV向けにIP-STBの機能を提供するとともに、映像や音楽をCD、DVD、ネット配信から取り込んで携帯電話に転送する機能を搭載しています。異なるデバイスでコンテンツを共有して楽しめるという意味で、モトローラが提唱するメディアモビリティを体現した、パーソナルメディア体験を充実させる新しい製品となります。
au BOXはアプリケーションのプラットフォームに、安定性に優れたLinuxベースのKreaTV(クリエイティブ)を採用しています。KreaTVはIP-STBごとのハードウエアの違いをHAL(ハードウエア・アブストラクション・レイヤー)によって隠蔽します。このためソフト開発者はハードウエアの違いを意識せずに、標準的な開発環境によってアプリケーションの開発生産性や移植性を高めることができます。
IPTVをはじめとする映像配信サービスでは、今後も様々な新機能が登場します。例えば、通信メディアではケーブルテレビや私設IP網に加えて、LTEといった次世代通信の利用が普及すると見られています。テレビの地上波放送も2011年にはアナログからデジタルに全面的に切り替わります。モトローラでは、「これまでの実績を生かしながらエンドツーエンドの製品群を積極的に展開し、地上波デジタル放送やIPTVなどの多様な映像配信サービスをサポートしていく」(鈴木)ことを計画しています。
※「au BOX」は、KDDI株式会社の登録商標です。